今年は年間読書数が50冊を越えました(例年は28-35冊前後、多い年で40冊くらい)。大学時代以来です(などと思って調べたら、社会人1年目は47冊、2年目は53冊読んでいました(※2018年は最終的に60冊を越えた)。当時は片道2時間通勤でしたから結構読めていたようです。3年目に30冊となり、以後例年ペースです)。31年ぶりに卒論のテーマと重なる書籍を重点的に読むことになり、この点では例年にない集中度合いで読み進めることができたような気がします(とはいえ薄い本が多く、反面映画や漫画は少なめの年となりました)。充実していました。今年はローマ史の本がいくつか出ていたのですが、歴史学方法論本にほとんどかかりきりとなったお陰でローマ史本はほとんど読めませんでした。来年に廻します。
(1)面白かった書籍
7.文字渦(感想)
8.静かな炎天(若竹七海著:比較的日常の謎に近い探偵ミステリー)
8.静かな炎天(若竹七海著:比較的日常の謎に近い探偵ミステリー)
9.元年春之祭(感想)
10.社会学はどこから来てどこに行くのか(感想)
その他面白かった書籍に以下のものがあります。
ドラヴィダの世界(感想)、中国ジェンダー史入門(感想)、大唐帝国の女性たち(感想)、限りなく完璧に近い人々 数学は歴史をどう変えてきたか、日本史の森をゆく、中国女性の四千年(感想)、世界史の構造、武士の家計簿、現代華文推理小説集2(感想)、さよならの手口(静かな炎天と同じシリーズ)、
『世界史の構造』。今年岡村隆司『世界史序説』が出て、安易な歴史哲学復活の可能性を疑ったため、仕方なく読みました。私の中では、「世界史」の構造とは、羽田正氏が『グローバル化と世界史』で記載しているような、知識の分類体系や研究体制の構造、認識の反映のことを言うのであって、歴史哲学で構造を描くのは古いのでは?と批判的なアマゾンレビューを書くつもりで読んだのですが、意外に悪くはありませんでした。分厚いにも関わらず一気に読めました。80年代当時の学説や思想をフル活用して描きなおすとこんな感じになるのかな、という出来具合です(著者はポストモダンを非難していますが)。ポランニーや精神分析を活用しているあたり、ドゥルーズ=ガタリ『アンチ・オイディプス』に似ていますが、後者の欲望史観と異なり、最近経済学畑で流行りの負債史観が主軸。『世界史序説』も、よくあるアンチ西洋イデオロギーとしての生態史観の先験的適用が懸念されましたが、地道な実証的環境史研究に基づく方向性だとわかり、こちらも予想と違って悪くはありませんでした。
SFは、飛浩隆『自生の夢』と中国SF短編集『折りたたみ北京』を読みましたが、凄く面白かったかというと、そこまでは言えそうにありません。『折りたたみ北京』は、それなりに完成度は高いのですが、既に米国のSFが到達している領域を出ないもの、という印象です(どこかで読んだことがある、という感じのものが多いのです)。もはや風刺ではなく、現実の中国社会そのものに見えるとこがシュールでしたが、一気に読めるという感じではなく、半年くらいかかって読んだものなので、面白かった書籍枠には入れられない感じです。しかし中国SFがかなり進歩していることは良くわかりました。今年は『三体』の邦訳が出るそうなので、待ち遠しい限りです。村田沙耶香の『地球星人』は面白さはイマイチだったのですが、思わず長文のレビューを書いてしまうものがありました(感想)。飛浩隆が唯心論的なのは、デビュー作の頃から薄々思っていたのですが、今回の『自生の夢』ではっきりしたような気がします。
ミステリー。原リョウの沢崎シリーズが出なくなってしまってからはシリーズものは読むことはなかったのですが、久々にシリーズものを読み始めています。若竹七海の葉村晶シリーズです。ポイントは、沢崎シリーズ同様、ほぼ同世代&ほぼ同生活圏です。(と思っていたら、沢崎シリーズの最新作が14年ぶりにでて驚きました。新作は懸念された通り、残念ながら、もう抜け殻でしたが・・・)。
(2)役に立った書籍
「役に立った」の意味は、文字通り調べモノに役立ったかどうか、という観点なので、例年では、完読している書籍はあまりないのですが(平均7割程度、便覧等の場合は1割程度のことも)、今年は列挙している書籍はほぼ完読しています(ただし一位の『歴史認識の時空』は4割くらいしか読んでませんが、、、)。
1、『歴史認識の時空』
2.『「世界史」の世界史』(感想)
3.『開かれた歴史へ』『過去と歴史』(感想)
4.遅塚忠躬『史学概論』(感想)
5.『思想2018年3月号』(感想)
6.『歴史学の擁護』(感想)
7.『グローバル化と世界史』(感想)
2.『「世界史」の世界史』(感想)
3.『開かれた歴史へ』『過去と歴史』(感想)
4.遅塚忠躬『史学概論』(感想)
5.『思想2018年3月号』(感想)
6.『歴史学の擁護』(感想)
7.『グローバル化と世界史』(感想)
11.社会学はどこから来てどこに行くのか
12.『秦漢城邑考古学研究』(紹介)
15.『思想1994年4月号』『思想2010年8月号』
17.『歴史の風景』
18.『天下と天朝の中国史』、
19.林健太郎『史学概論』
20.『ローマ帝国期における北アフリカ』
23.『現代中国・台湾ミステリビギナーズガイドブック』(感想)
大学卒業後、30年ぶりに歴史学方法論のこのあたり議論の最新情報のアップデートができました。当時歴史学側ではまったく相手にされていなかった議論が、ほぼ西洋史だけとはいえ、だいぶ理解が進んできているようでうれしい限りです。今年は一応文化人類学の最新情報書籍も読めたので、来年は、理論社会学と言語学、心理学の最新方法論書籍を読んでみたいと思います(年末ぎりぎりで社会学も一冊読めました)。認知科学や脳科学が様々な分野で期待されているようですが、安易に過度に性急に結果を求めすぎて勇み足になるようなことがないよう祈る次第です。
昨年から集中的に読んできたジェンダー史本は、中国ジェンダー史のあと、『インド-ジェンダー研究ハンドブック』を購入しました。この書籍は有用でコスパも良い書籍だとは思うのですが、やはり広大なインド、あまり厚くも無いページ数に各種テーマを詰め込んでいるため、内容の浅さを感じる部分もあり、結局積読になってしまいました。ジェンダー史探求が止まってしまった、という意味で役にたってしまった書籍となりました。女性史本を読んでいる時には気づかず、言語論的転回関連本を読んでいてジェンダー論の深刻さに気づくことになりました。私は、秩序というのは、6:4のように、どちらかの勢力が圧倒している場合に安定するのであり、フィフティ:フィフティは、どちらも相手の方が圧倒していると思い易い状況で、お互いに不満を持ち、相手を脅威と思い、不安定になり易い状態だと思っています。例えば冷戦期は、米国のソ連に対する圧倒的優位のもとに均衡していたのであって、仮に米国とソ連が5:5で均衡していたら、非常に不安定になっていたと思うのです。現在は、中国が力をつけてきていて脅威のように見ている人がいるかと思いますが、実際のところ米国及び旧西側陣営が圧倒しているのが実情です。国々の争いだけではなく、ジェンダー関係においても、フィフティ:フィフティの状況は、お互いに相手を脅威と思い、片方が圧倒する状態の秩序を目指しやすい(優位にある側は、6:4になってはじめて5:5だと考え、そう主張する)、結局圧倒される側が不満を飲み込むことで秩序を安定させてきた。それがこれまでの人類だったと思うのですが、今や人類は、フィフティ:フィフティの状況で安定できるかどうかが試されているのだと思います。まあ、50:50の状況は、一方で相手によっかかれるような圧倒性のない、頼りがいがないようにも見えてしまう側面もあるわけですから、そうであったとしても、人類は多くの局面での(トータルとして)50:50での秩序の維持に挑戦すべきフェーズに入っているのだと思う次第です。
(3)漫画
読書に時間をかけたため、今年は漫画喫茶での徹夜で一気読みは一度もなく、それどころか漫画喫茶に行ったのも2回くらいで、Web漫画を読む比率が増えました。ぶっちぎりで面白かったといえるのは以下二つでした。
他に読んでいる/いたWeb漫画は以下のものがあります。
『エーゲ海』は、『乙嫁語り』の二番煎じ、というと否定的な印象となりそうですが、『乙嫁語り』の二番煎じができるということがどれだけ凄いことなのか、を考えると、相当な画力と勉強量が必要なレベルの話です(作者は史学科卒かも)。まだ始まったばかりですが、今のところ手堅い感じです。この画力と知識量で、息切れせずにあとはどこまでドラマを盛り上げることができるかどうか、期待の作品です(2月にコミックスが出るそうです)。『バベルの設計士』もインパクトのある描きぶりです。レベルが高い歴史漫画が本当にたくさん出てくるようになりました。あまりに多いため現在連載中の作品の全体像を知ることさえできず、どれを読んだらよいのかもさえわかりません。ここの数年の歴史漫画便覧のような書籍が出てくれると嬉しいです(既にあるのかも知れませんが)。まあでもビザンツが登場する漫画はないのでしょうね。
昨年まで読んでいた歴史漫画は『乙嫁語り』『プリニウス』以外、今年は読めませんでした。『応天の門』『雪花の虎』『乙女戦争』『狼と香辛料』『ヒストリエ』などは完結したら漫画喫茶でまとめ読みすることになりそうです。
他に面白かった漫画には以下のものがあります。
『星間ブリッジ』(感想)、『はたらけ!睡魔さん』、『プライド』(4巻まで:ゴルフ漫画)、『日給おいくら?』、『虚構推理』、『少女ファイト』(1巻)、
『少女ファイト』は第一巻に感銘をうけ、10巻くらいまで読んだのですが、第一巻がピークのような気がします。『プライド』は、ゴルフ版『下町ロケット』。ゴルフ関連の技術解説がわかりやすく、下町企業と契約プロの頑張りも面白いのですが、5巻以降は話がうまく行き過ぎて失速したのが残念。『睡魔さん』は、仕事中毒者あるあるが面白かったです、
(4)映画
すっかり(ブログ記事を書きながら)Gyaoの無料映画を見る癖がついてしまいました。今年はほとんどGyaoの無料映画しか見ていません。歴史映画は数本しか見た覚えがありません(『マリー・・・』、『パドマーヴァット』、古代アルメニアドラマ『古代の諸王』、『セデック・バレ』『ヴァイキング・サーガ』)。学生時代から見ようと思っていたフェリーニの『道』が見れたのは良かったです。こんなものまで無料公開してしまうGyaoは少しやりすぎではないかと思うのですが(今年年初のキネマ旬報ベスト10特集は凄かった)、、、、近所のツタヤが潰れるのもわかります。もうすっかりレンタル映画はネットに移行した感じがしますし、一昨年くらいからの少々異常とも思える電子漫画割引&無料サービス攻勢を見ると、漫画も重心を電子書籍に移行しようという意気込みを感じます。漫画の電子化は2017年が転回点ではないかという気がします(個人的には買いきりではなく、5時間1000円で読み放題のように、漫画喫茶と同じ価格帯のサービスがあると嬉しいのですが、、、)。
映画に関しての今年の収穫は、イスラーム圏でのSFの普及状況が少しわかったことでしょうか(攻めの気持ちで調査として見たのはこの時くらいでした)。
1.フライト・ゲーム
2.ダンサー・イン・ザ・ダーク
3.トランスポーター3、
4.マダム・イン・ニューヨーク
5.道
6.マリー・アントワネットに別れをつげて(感想)
6.マリー・アントワネットに別れをつげて(感想)
7.スターシップ9
8.テヘラン2121(紹介)
9.正義のゆくえ I.C.E特別捜査官
10.セデック・バレ
10.セデック・バレ
11.凶悪
12.鎌倉物語
13.万引き家族、三度目の殺人
14.武士の家計簿
15.3月のライオン
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今年は小粒な作品のどんぐりの背比べで、豊作の年の10位前後の作品が多数あるという感じです。きりが無いのでこのへんでやめます。ほとんど受身でながら見していただけなので仕方がありませんが、、、
是枝監督『万引き家族』は来年年初に発表されるキネマ旬報ベスト3に入りそうな作品ですが(もしかしたら1位になるかも)、個人的にこの手の作品に素直に感動できなくなっている自分を意識して終わりました。30代に入って社会派小説や文学作品が読めなくなってしまったのと同様、キネマ旬報の上位に来るようなまじめな社会派映画も、散文的な現実を物語に仕立て上げているだけのように感じられるような年になってしまいました。年初のGyaoのキネマ旬報ベスト10特集では、いつか見たいと思いつつ、時間が取れず優先度の低くて見れなかった作品を消化するいいチャンスなので18作(ほとんど社会派作品)ほど見ましたが、うーん、、、という感じ。作品としては良いのですが、、、、一周回ってまた素直に見れるようになる時が来るのかも知れませんが、、、漫画の『木根さんのひとりでキネマ』という作品の、”映画は2時間で終わる、でもわたしたちの(散文的な)生活と現実は続く”というような台詞同様、年を重ねると社会派映画の視聴は難しくなります。
是枝監督『三度目の殺人』で興味深かったのは、アマゾンのレビューでした。歯切れの悪い終わり方に、どうしても「真実」や自分の物語を読み込みたい、そうしないといられない、という人と、そうでない人がわりと明確に分かれていて、興味深いものがありました。『万引き家族』の方も、若干本当のところはわからない、という感覚はあって、そこは良かったです。しかし、社会派映画でも参考になるところはあって、『凶悪』でモデルになった実際の事件や、北九州監禁殺人事件を知ることができて大変参考になりました。衝撃です。
(5)webサイト
今年存在を知り、非常に参考になったサイトです。他にもtwitterなどで色々有用なサイトの情報は集まったのですが、ほとんどは存在を知るだけであまり読んでいる時間がなかったので、ここで紹介するのはいくつか記事を読み、実際に参考になったサイトです。
1.水中考古学者(船舶考古学博士) 山舩晃太郎氏のサイト「Hi-Story of the Seven Seas 水中考古学者と7つの海の物語」
西洋水中考古学の専門書に近い紹介があり、非常に有用です。
2.比較ジェンダー史学会 日本のジェンダー史研究の中心。ここも多くの論説があり参考になります。
3.翻訳ミステリー大賞シンジケート 非欧米日のミステリー事情の情報が得られる翻訳者たち運営によるブログ
4.全日本もう帰りたい協会 最初は面白かったけど、しばらくすると病的に感じられるようになってしまいましたが、面白いです。
5.youtube ソフト上野由岐子VSプロ野球選手 最後の阪神鳥谷の三振、バットを思わず叩きつけようとしたところでは、本当に悔しがっているように見えました。
6.中世九州の名門菊池一族の公式サイト これを菊池市役所がやっているというのが凄い。見つけたのが12月だったので、忘年会ネタになりました。
毎月1時間、若手西洋史研究者がネットで講義するというもの(21-22時の60分)。存在を知ったのが春頃、しかし毎回聞き逃していて、7月と8月は、両方ともライブ当日の20時39分に思い出し、最後の20分だけ聴く。9月ようやく最初から聴けたが、10月は忘れ、11月は放映なし、毎月月末だと思っていたので、12月は昨夜確認したら、19日に終わっていた。というように、なかなか聴けていませんが、よい企画だと思います。
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