今年は昨年にも増して豊作でした。例年であればベスト1になるような書籍が5冊登場し、二十年に一度という感じです。今年は調べものはほとんどやらず、歴史映画サーチもせず、漫画も映画もあまり見なかったので、映画や漫画の収穫は多くはなかったかわりに、読書方面は当たりの本が多かった年でありました。今年はベストにあげる冊数が多いため、今年の新刊本と前年以前の書籍をわけてベストを挙げたいと思います。
(1)今年の新刊ベスト
1.アレクシアス(感想)
2.新しい哲学の教科書 現代実在論入門(感想)
3.なぜ歴史を学ぶのか(感想)
4.コンスタンティノープル使節記(感想)
5.アイデンティティーが人を殺す(感想)
6.海外で研究者になる(感想)
7.漢帝国(感想)
8.ヨーロッパとゲルマン部族国家(感想)
9.ユグルタ戦争・カティリーナの陰謀
(2)前年以前に出版された本のベスト
1.歴史学研究入門(感想)
2.マックス・ウェーバーの日本(感想)
3.ローマ帝政の歴史1(感想)
4.歴史学の危機(感想)
5.ジョージア建築史(感想)
6.古代ローマ帝国15000キロ(感想)
7.ヨーロッパ史における裁判事例(感想)
8.星占いの文化交流史(感想)
9.プトレマイオス王国と東地中海世界(感想)
10.隊商都市パルミラ(感想)
11.哲学者・ソフィスト列伝(感想)
12.中国古代史研究の最前線(感想)
13.歴史学研究法(感想)
14.貨幣が語るローマ帝国
15.軍事史学(古代ローマ軍事史研究の最前線II (第54巻 第2号))
16.捏造された聖書
17.古書の来歴
18.ローマ法とヨーロッパ(感想)
今年は小説を殆ど読んでいませんが、完読した書籍は2年連続で60冊に達しました。気分転換に趣味の歴史本を読む、しかし歴史本は集中力が必要で、疲れるものも多いので、更にその気分転換に推理小説を読む、というパターンがひとつあるわけですが、今年は気分転換になる、一気に読める歴史本が多く、小説を読む必要性がほとんどない年となりました。電子書籍もとうとう積読となってきてしまいました。事業停止や電子書籍出版社倒産で読めなくなる危険があるため、電子書籍で積読はたいへん危険なのですが、『三体』どころか漫画『プリニウス』『ヒストリエ』『乙嫁語り』の新刊まで電子積読となってしまいました。
例年ですと、この年末書籍ベスト記事は、基本的に11月末ごろ書いています。12月はなにかと忙しく、また、12月に入ってから記事の構成に大きく影響する書籍に出くわすことはあまりないため、11月末の時点でのベスト10記事を一応書いておいて、12月末に若干追記修正する程度なのですが、今年はこの記事を書く時間がないほど面白い書籍に遭遇し続け、これを書いているのは12月29日です。
※新刊旧刊合わせてのベスト5
1.アレクシアス
2.歴史学研究入門
3.マックス・ウェーバーの日本
4.ローマ帝政の歴史
5.歴史学の危機
(3)役に立った書籍
こちらは、有用な書籍という意味で、例年では完読していないものが多いのですが、今年完読していないものは、9、16、19くらいです。
1.歴史学研究入門
2.新しい哲学の教科書 現代実在論入門
3.歴史学の危機
4.マックス・ウェーバーの日本
6.ジョージア建築史(感想)
7.交趾郡治・ルイロウ遺跡I (感想)
8.バクトリア史研究(PDF)
9.ビザンツ法史断片(感想)
10.データ分析の力 因果関係に迫る思考法
11.佐伯(片倉)綾那『アレクシアス』関連PDF
13.答えのない世界に立ち向かう哲学講座 AI・バイオサイエンス・資本主義の未来 (感想)
14.過去は死なない
15.史料からみる中国法史 (感想)
16.山本英史編『中国近世法制史料読解ハンドブック』(東洋文庫、2019年)(PDF)
17.私でもできる西洋史研究 (感想)
18.海外で研究者になる
19.西洋法制史(感想)
その他 ライフ・シフト、中国経済講義、陰謀の日本中世史、日本軍兵士、日本史の論点、イスラム法通史、なぜ世界は存在していないのか(感想) などが面白く読めました。
SFでは、中村文則のディストピア小説『R帝国』を読みました。R=Riben=日本で、明らかに現代日本を風刺しているのに、中国共産党を風刺しているとか感想を書いている人がいて困ったものです。ディストピア社会ぶりはよく描けていたものと思うのですが、善悪の構図があまりに稚拙なところが残念な作品です。ラストの巨悪・加賀に立ち向かうヒロイン・サキは、漫画狼少女ランでランが余裕綽々の悪の大幹部サグの映像を前に歯ぎしりしながら立ちすくむ構図とまったく同じ。美男美女の主役たちVS悪のヒヒジジイみたいな、いい加減こういう単純な善悪図式から抜け出さないと説得力、リアリティがありません。これは映画『新聞記者』にも感じた点です。
「SFが読みたい!」の2018年ベスト1『零號琴』は若干期待外れでした(感想)。『三体』は来年読みます。たぶん「SFが読みたい!」の今年のベスト1でしょう。
(4)面白かった漫画・映画
今年は不作というより、まったく身を入れて探さなかったため、小粒なものばかりです。しかも例年の半分程度の30本くらいしか見ておらず、そのうちの殆どはブログ記事を書きながらGyaoの無料映画で視聴した、という程度なのですが、意外に良作にあたることが多く、生産性は高かったような気がします。
1.サーチ/searching 映画
2.イヴの総て 映画
3.いらかの波 漫画
4.七つの会議 映画
5.かげきしょうじょ 漫画
『サーチ』・・・今の時代、人は仕事でもプライベートでもあんな感じで始終検索しログインし決済しまくっている、という臨場感ありまくりです。
『イブの総て』子供の頃からずっと見ようと思っていてなかなか見ずにいたもの。ようやく見ました。確かに時代を越えた名作です。
『いらかの波』小学六年の頃連載がはじまり、最初の数回だけ読んでその後が気になっていたもの。同僚に持っている人がいたので借りました。古き良き時代の学園もの。この主人公たちももう50代後半、、、その後どういう人生になっているのか、はあまり知りたくない感じ。あまりにもまぶしいあの頃。
6.『珠詠』6巻 漫画
7.バニシングIn60 映画
8.route end 漫画
『珠詠』男が登場しない世界のSFとして読んでいましたが、正統派野球漫画のような妙な盛り上がりと感動を見せる第六巻。対戦相手の孤高のエース兼主砲兼人格者が主役たちを食ってしまいました。
『バニシングIn60』これも子供の頃から見ようと思って機会のなかった作品。Gyaoでやっていたので見ました。噂に違わない作品でした。
『route end』デイヴィッド・リンチ風の本格的なサイコサスペンスでしたが、、、、最後哲学SFのような展開を見せ驚きのアクロバットでした。推理サスペンススリラーとして読んできたので、いきなりのSF転回にとまどいましたが、少し時間がたってみれば、これはこれで悪くない展開でした。
9.アイインザスカイ 映画
10.ここは退屈迎えに来て 映画/小説
11.空電ノイズの姫君/空電の姫君(感想) 漫画
12.クリスティ・ロンロンマッシブ(感想)
『ここは退屈迎えに来て』国道16号現象を題材とした作品。面白いというよりひとごとではない身近さに映画を見た後原作も読んでしまいました。16号なんてまだ都会だけど、129号ともなれば立派に田舎。この作品そのもの的な。昨年卒業以来の高校の同窓会にいってきましたが、驚いたのは、殆どの人が県内で就職していて、県外へ出た人は逆に思い切り遠く(北海道とか海外とか)にいってしまっていたりして、東京に出た人は数人しかいなかった、ということ。30年がかりの小田急線の複々線化完成の話題がまったくスルーされてしまい拍子抜けでした。『空電ノイズの姫君』みたいな話題ができる人はいませんでした。
13.エーゲ海を渡る花たち 漫画
14.新聞記者 映画
15.スーパーサイズミー 映画
『スーパーサイズミー』(マクドナルドのハンバーガーを一か月食べ続けるというドキュメンタリー映画)、いつものアメリカ。
『新聞記者』、主役を日本人女優が演じられなかったところが残念です。
今年は歴史映画はほとんど見ませんでした。視聴したのは以下のものくらいです。
141年ダキア(感想)、キングダム、三銃士/王妃の首飾りとダヴィンチの飛行船、奇跡の丘、セバスチャン、10人の剣闘士の勝利、騎士道物語
面白かったのは『10人の剣闘士の勝利』くらいで、『奇跡の丘』はGyaoで放映されていたので見たのですが、ブログ記事を書きながら視聴してしまったため、集中できずもったいないことをしました。アレクシオス一世が登場している『騎士道物語』を発見できたことは収穫でした。
『エーゲ海を渡る花たち』は、『乙嫁語り』から殺伐とした部分を取り除いたほのぼの路線であり、かなり殺伐とした世の中を深窓の令嬢が旅をするという、若干無理な設定でしたので、ストーリーをどこまで盛り上げることができるか、がポイントだと思っていたのですが、この点では、あまり盛り上がらずあっさり終了してしまったのが残念です。しかし、最終回では、本作が、女性の不自由な時代をテーマとしていたことが分かり、この点では、女性が史実上ありえないような活躍をしてしまう娯楽作品になるよりも、リアリティのある作品となったのではないかと思います。メッセージ性も、あまり目立ち過ぎない程度にうまく盛り込めているように思えました。良作です。
また、最終回ではトレビゾンド帝国が登場し、その描かれぶりに感動しました。私の知っている限りでは、現役のビザンツ人が登場した初めての漫画です。
歴史漫画では、今年は、チェコのフス戦争『乙女戦争』が終了しました。長期連載では、過去の巻の内容を忘れてしまっていることが多く、本作の過去巻ももう売ってしまっていて、漫画喫茶で全巻一気に読み直して感想をまとめたいと思っていたのですが、今年は一度も漫画喫茶にいかなかったため、来年感想をまとめたいと思います。著者は、書きたいことを全て書ききった、といっているとのことなので、まずはなによりでした。
SF映画もわずかしか見ませんでしたが、B級作品ながら意外におもろいものに遭遇しました(ほとんどGyaoで見たものばかり、、、)
SFボディスナッチャー、ジャッジメントフライ、7500、マンダウン、ビギニング、マンイーター、ペンギンハイウェイ、移動都市、
『アイアム・レジェンド』は、チャールトン・ヘストン主演の『地球最後の男』のリメイクですが、やはり原作のラストが改変され、重要な作品としてのメッセージが台無しになっていたのが残念でした。
映画では、あとは、ラ・ラ・ランド、Focus、デザートフラワー 、シティ・オブ・ゴッド、カメラを止めるな! といったところが面白く見れました。
漫画では、タカコさん、はんなりぎろりの頼子さん(京都ご当地漫画)、ローカル女子の遠吠え(静岡ご当地漫画)、敗者復活戦、自殺探偵 が面白く読めました。
『はんなりぎろりの頼子さん』は、連載が終了してしまいましたが、むりに引き延ばさないところが良かったのではないかと思います。この本は、1,2巻はコミックを購入し、3,4巻は電子書籍、5巻以降の部分になってからweb連載していることを知り、最後はwebだけで読んでいましたが、来月最終巻が出るそうなので、電子書籍、購入したいと思います。
(5)その他
モンゴルロックバンド THE HU のプロモーションビデオには衝撃を受けました(こちら)。まさに5世紀ヨーロッパに襲来したフン族のイメージそのもの。こんな集団がある日忽然と地平線上にあらわれ、重低音の喉歌とともに襲撃してきたとしたら、それは怖い。来年日本公演があるそうです(こちら)。まだ日本語Wikipediaはないようです(英語)。
今年は展示会等あまり出歩かなかったのですが、11月17日に行われたオリエント博物館主催の講演会青木健氏の『サーサーン朝の帝国都市と宗教』は、いろいろと参考になりました。青木氏を見るのは初めてだったのですが、書籍から感じていた通りの風呂敷ぶりの方でした。ので、この講演会の内容をとりまとめて感想を書いたりするにはかなりの精査が必要そうです。当面時間が取れそうにありません。私はあまりサーサーン朝に関する学術論議への関心はもっていなかったのですが、クリステンセン以降の研究史に興味を持ちました。今後は粛々と情報収集していきたいと思います。
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